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第1章 地球生命圏 Tweet



 地球上に生命が誕生してから38億年

 最初は化学反応によって生起された化合物は、DNAを獲得し自らのコピーを作り進化を始めました。最近の科学では、最初の生命は一種類であったそうです。
そこから微生物と呼ばれる原始的な微小生物が誕生し、結合分離を繰り返しながら、より複雑な生物へと発展してゆきます。


  図:1-1 現在多彩な生命群も、最初の一個の生命の元から進化していった。

 進化の歴史は、地球上に様々な生命を生み出し、自然環境のへ間により繁栄と淘汰を繰り返してきました。その数は500万種類とも1億種類ともいわれています。
 この地球上の生物の生物の頂点にいると勝手に考えているのが人間ですが、人間が生きて行くには水と空気と食料が必要です。これらはみな太陽と地球上のあらゆる生物や自然現象の営みの恩恵により人間が手にすることができます。

 生物は大雑把に二種類に分けられます。すなわち個体本体が移動する生き物と一ヶ所に留まり移動できない生き物です。
 ここでは動物を(魚も含めて)移動できるものとし、根を張り移動できない生き物として植物を定義します。

 移動できるものと、移動できない事の違いが、『ナルナル』の栽培科学の基本となります。
 移動できる者とできない者では進化の上で決定的な違いが生まれます。
それは生命を維持する仕組みの違いです。
 これからこの事実を考えて見ましょう。

地球上の生物圏

このイラスト図1-2は、地球上の生物生息圏を描いたものです。
地球上の生物は、地球の大きさから見るとまるで薄い膜の間に生息しているに過ぎません。
解りやすくするために大気の層は実際より厚く描かれています。


 図:1-2 地球の各層の厚さ

もともと地球の大気に酸素は無く、植物の活動によって酸素が生み出されました。15キロの厚さの大気の中で生物が暮らしています。

植物と大地

 植物は光合成により成長しますが、大地に根を張り水分や土中の養分を吸収します。また、根は植物の体を支える役目もしています。
 木の根について多くの人が誤解を持っています。それは木の根が地中深くまで達しているという誤解です。確かに針葉樹などでは、地中15mに達するほど深く根を張る種類もありますが、ほとんどの樹木の根はせいぜい1メートル前後の深さにしか根を張りません。
 下の写真はエゴノキの根を注意深く掘り出して展示したものです。根自体は深く根を伸ばすことよりも、より広く平行に根を伸ばしていることが観察できます。
 根は土中の養分の多いところで細根を集中的に発達させ、養分をより多く吸収しようとします。微生物も根に沿って地中深くに浸透していきます。
 深く潜る根は水分を求め、横に広がる根は養分を求めているといえます。
写真:1-1
写真:1-2
写真:1-3
写真:1-4
写真1〜4*国立科学博物館に展示してある木の根(エゴノキ)の標本。土中から丁寧に木の根を掘り出し、根の張り具合が分かるようになっている。木の真上から地上部をちょん切って土中の部分を観察できます。撮影時ガラスが反射してやや見にくくなっています。

 写真1-1は木の根が土中でどのように伸展しているかがわかるようになっています。
 木の根はくにゃくにゃ曲がっていて密な所と疎な所があるのがお解かりいただけるでしょう。木の根は養分や水分を求めて伸長します。
 土中内では養分が均一に存在している訳ではないので、根が複雑に入り組んでいる所と根が張っていない場所があるのです。
 そして、地表から浅い場所で根の活動は活発となっています。
 土中の栄養分や状態は同じ場所でも数センチ離れるだけで、様相が変わってくるのです。土をどんなに良くかき混ぜても全て均一な状態の土壌を作ることは大変困難なことなのです。まだまだ未解明の謎がたくさんあるのが植物や土壌の世界です。

 
 図:1-2 実は木の根は深く張っていない。


参考写真 高尾山のハイキングコースの根

土と土壌の違い

 山地を崩して土砂を採取する場所は日本各地にたくさんあります。それらの土地を見ていて、すぐには草が生えて来ないことに気がつきます。土地を持ったことがある方ならばわかると思いますが、日本の地面はすぐに大量の雑草が生えてきます。ちょっとした庭を持っていたりすると草取りで休日が終わってしまうこともしばしばでしょう。それだけ日本の土地は温暖多湿で、植物が生えやすい環境であることが解ります。しかし、土砂を採取した跡地にはなかなか草が生えません。


写真:1-13 削りとられた山肌 (千葉県茂原市)

 下の写真は上の写真の円内を拡大したものです。丘の上に生えている木の根を支える土壌の部分は30cm位しかありません。茶褐色の部分のみが根を生やす事の出来る部分で、その下の肌色の部分は岩や砂でてきています。

写真:1-14

下の写真はさらに拡大した写真です。わずかな土壌にへばりつくように草が茂っています。
図:1-2では、土壌の厚さは18cmとあります。この事実がこの写真からもお解かりいただけたと思います。



写真:7


 高尾山の木の根の写真をみてわかるように、樹木は山肌にへばりつくように根を生やし地面にへばりついています。
 それには訳があります。そのヒントが写真5〜7なのです。

 植物が生育している場所としていない場所、その違いはまず色に表れます。
世界の土の状態は、それぞれの地域や環境で大きく異なります。
日本の場合、火山灰土が多くを占めています。その理由は日本は火山が多く噴煙による降灰が多かったためです。
 地球上には、砂漠のような灼熱の砂だけの世界もあります。そこには生き物はほとんどいません。(微生物はいます。) 砂は単なる鉱物の粒子にしか過ぎず、常時植物を育む環境にないのです。
 
 生命の誕生当初も地上に生命の香りは無く、無機質な世界が広がってたことでしょう。
 しかし、生物はここから生命の園を作り上げました。現在まで38億年が経過しています。
(写真7)の草が生えている部分の茶褐色(コーヒー色)の部分には植物が生育できる環境があるのです。
茶褐色の下の肌色や灰色の部分は、砂漠の砂と同じで植物が生育できない環境と同一といっていいでしょう。

生物の進化環境

動物と違い、移動のできない植物は、その場で必要な養分や水分を得なくては生命を維持できません。現在の植物の形態は長い進化のうえに獲得した完成された姿といえます。
植物は移動できませんが、動物以上に長い寿命を得ることができました。
  ちなみに魚類ではチョウザメで150年、
  両生類のヒキガエルは30年以上
  爬虫類のゾウガメが150年以上
  鳥類のワシは50年
  哺乳類のチンパンジーは60年、
  シロナガスクジラでは116年生きたものが発見されているそうです。
  私達人間の寿命は120年です。
当然これらは長寿の場合です。人間でもここまで生きられるのは極わずかな人に過ぎません

 植物の場合、通常の庭に生える草などの寿命は1年〜三年程ですが、樹木になると有名な屋久杉の場合、2000年以上の長寿を保っています。

 樹木の場合、100年以上の寿命はごく普通に観られる現象です。

 環境さえ整っていればいくらでも樹木の寿命が延びますが、環境の変化により死んでいく個体もあります。
 環境変化の要因は、様々です。天候の不順による・渇水や洪水、気候変動、虫害や動物による食害など様々なストレスが植物を襲います。最近では地球温暖化の影響で、気候変動が多発しています。

植物が受けるストレス 原因 現象 結果
自然現象に関するもの 気候の変化 日照り・低湿度 水分不足・乾燥
長雨 日照不足
高温障害 暖冬・猛暑
低温障害 冷夏・厳冬
熱波・熱風 水分蒸発
極寒 結氷による細胞壁破壊
降雹 葉・枝・果樹の損壊
高湿度 かびの異常発生
台風(竜巻) 強風による落葉、
倒木

塩水による塩害
地盤の変化(地震を
含む)
地すべり 土と根の乖離
液状化現象
地下水位変動 水分不足・過多
洪水による冠水 土壌の侵食 根の酸素不足・根ぐされ
火山の噴火 降灰・土石流・噴

有毒ガスの発生
火山地帯 鉱物毒
落雷 倒木・火災
山火事 火災
他の生物との接触によるもの 虫害 虫による葉の食害

樹液の吸い取り
果樹の虫食い
表皮への進入棲息
病原菌 各種病気の発生
鳥獣害 もぐらなどによる根
のせん断

樹皮の食害
果実の食害
葉の食害
人間が関与するもの 酸性雨 土壌の酸性化
土地改造 地下水位変化
根のせん断
土質の変化
大気汚染 有毒ガス
樹木の剪定 必要枝除去
樹木の移植 環境の変化
地下水汚染 有毒物
道路 根の圧迫
アスファルト道路 水分。空気不足
ハイキング・公園 靴による根・葉の損傷
高層建築物 日照不足・ビル風
表:1-1 植物のストレス
 
植物は、誕生してから様々なストレスを受けながら成長してきたといえます。
 そして、それと同時にこれらのストレスに対する耐性も獲得してきました。ストレス耐性を獲得していなければ、今日の植物の繁栄はないし、私達人間も生存できません。

 最近の科学の発達は目覚しく、DNA(生物の遺伝情報)の解析により、生物のルーツが次々と判明してきました。
 人間の遺伝子数は約3万個です。対して稲の遺伝子数は約4万個であることが解りました。
 ちなみにショウジョウバエの遺伝子数は約1万4千個で、大腸菌では4,300です、ブタやネズミは人間と同じくらいの遺伝子を持っています。
 遺伝子はその情報の全てが使われている訳ではありません。進化の過程で使われなくなった遺伝子を含んでいます。一時期遺伝子情報のほとんどは使われていないのではないかといわれていましたが、最近の研究では70%位使われているようです。残りの30%は必要ない?過去の遺物なのでしょうか。
 人間の体に比べ実に細くて小さく単純な機構に見える稲はどうして、人間より多くの遺伝子が必要なのでしょうか。
 その最大の理由は、稲の歴史が人間より古いことでしょう。そして、それだけ過酷な環境の中で生き延びてくる知恵を得ているということです。これが、素晴らしいストレス耐性を生み出す元です。