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第4章 根と微生物 Tweet


植物を守る育てる菌

微生物は、空気を好む菌や嫌う菌、様々な種類の菌が共生して根と共に繁栄します。微生物を繁殖させようとする場合、まず新鮮な空気のある地表近くで繁殖させるのがもっとも効果的です。深さ30センチの土の中の微生物数は地表近くの半減以下となっています。肥沃な土とは微生物の多い土壌のことです。

 微生物が作物の育成にどのような影響を与えるかは、多くの学者の研究するところです。表:5-1はその一事例です。微生物が多い少ないで、収量にも影響が出ます。植物によりついてくる根圏菌は、微妙に異なりますので、栽培に適した微生物を育てる事が肝心です。
 と、書いても微生物は環境で変化しやすいものですから、一般の方の場合、あまり微生物の種類については気にせずに良い土を作ることから始めればよいでしょう。

植物生育促進根圏細菌(PGPR)による植物の生育促進効果
細菌 作物 生育促進効果

Bacillus subtilis コムギ 30 穀粒量増
ニンジン 48 収量増
Pseudomonas fluorscence ジャガイモ 14〜33 収量増
サトウダイコン、ダイコン 4〜8 t/ha 収量増
カーネーション 18〜41 茎葉重増
Pseudomonas putida ジャガイモ 14〜30 収量増
蛍光性 Pseudomonads サトウダイコン 25〜85 収量増
ジャガイモ 3〜5 生体重増
百町満朗:微生物の資材化:研究の最前線、ソフトサイエンス社、2000を一部改変
表5-1 PGPRによる植物の生育促進効果

下の図に判りやすくまとめて見ました。




光合成で作られる糖のうち、地下の根部の成長と地上部の葉や実、枝の成長に使われる割合は必ずしも上図のように50%づつと言うわけではありませんが、便宜上50%と表現してあります。糖分の分け前は、季節や天候、食物種や植物の成長時期によっても異なりますが、このような事実があることを知ってください。


良い畑とは-土壌メタボからの脱却

 良い畑には微生物が沢山棲み付き、あの土の香りがします。土の香りは微生物の胞子や分泌物の匂いです。

 間違って伝わっていることに、ミミズのいる畑は良い畑であるといわれています。しかしこれは正確ではありません。本当に良い極上の畑にはミミズはいません。モグラのよく出る畑は、ミミズの多い畑です。モグラはミミズを食べるためにやって来ますが、土の中にトンネルを作り通気性の改善に一役買っている、天然の耕運機です。

 動物が、死んだときのことを考えて見ましょう。動物の死骸に最初に取り付くのは、肉食の獣や鳥です。その次にハエや昆虫がたかります。肉食の鳥獣の糞にたかるのもハエや昆虫ですね。
 その残った残渣を糞コロガシやダンゴ虫、ダニのような小さな虫が食べます。そしてその糞をミミズが食べるのです。ミミズの糞もまた、クマムシのような原生動物やきのこ菌やカビが食べて分解し、そのさらに小さな分解物を土壌微生物は養分として使います。
 また、動物の死骸を腐らせるのも微生物の仕事です。このように無駄なく沢山の生き物が暮らしあう食物連鎖が出来上がっているのです。


 ミミズを採った記憶があるならば、思い出して欲しいのは、ミミズは良い土の香りがする畑よりもちょっと臭いじめじめした土や、生ゴミの腐ったような中に多かったという事実です。
  ミミズの棲むような畑は堆肥のような半熟土壌といえます。有機物が微生物の栄養源になっていない状態です。
 人間でいえばメタボな状態と言うことです。
反対に完熟という言葉がありますが、これは、微生物が活発に活動できるまでに有機物が分解された状態を示します。見た目で有機物は残っていません。
 良い土の条件は、良い土の香りがすることです。これでは人間の官能的すぎる表現かもしれません。科学的に言われていることは、保水力がある。通気性がある。団粒化している等です。ペーハー値も中性近くであることです。

植物と微生物の共生

 菌根菌という分類をされる菌がいます。この菌は植物の根中と根の近辺の土壌中に長く菌糸を張り巡らし、土中から養分を根の中に運ぶ働きをします。
 根瘤菌(根粒菌)はマメ科の植物と共生し、空気中の窒素を固定して植物の根の中に蓄えます。窒素固定菌とも言います。



写真:5-2 ↑落花生を畑から掘った直後の写真。落花生を上下さかさまにして撮りました。根の周辺に見える白っぽい玉が落花生の実です。

写真:5-3 ↓上の写真の根の中心部の拡大写真。根に小さな粒々がたくさん付いています。これが根瘤菌(根粒菌)のつくる粒です。この中に菌の造った養分が貯蔵されます。画面右下の白い玉は落花生の実です。根瘤菌との大きさの比較をしてください。

 
土壌中の菌数は、1g中に『10の7乗』匹の沢山の微生物が生息しています。『10の7乗』は1億です。たった1gの中に1億匹の微生物が活躍している事になります。の根瘤菌の場合、一粒1gとした場合、100億匹以上の微生物が根に付いている事になります。
 しかし、人間社会と同じで、菌の全てが働いているとは限りません。ひょっとしたら2割の微生物しか仕事をしていなくて、後の菌は寝ているか遊んでいるかも知れません。微生物は顕微鏡で覗いて初めて存在が確認できる生物です。実際の土の中でどのような働きをしているのかはまだまだ解明されてはいません。

 写真5-2.3は同じ物の写真です。(ナルナルによって土壌改良済の畑です)
 気がつくと土から掘ったばかりなのに土が着いていません。土から掘ったものには土が大量に付着しているのが普通だと思っていませんか。
 良くできた畑は、ふかふかしていると言います。また、土が軟らかくなっているので根菜の場合土から引きやすいといわれています。実際、この落花生も楽に土中から抜く事ができました。しかも、土がほとんど附着していません。
 
 抜いたばかりの根は白色でしっとりとつやつやしています。これは根の周り全体が透明な粘膜に覆われているからです。この粘膜(ムシゲル)は根や微生物が分泌したもので、病害菌を寄せ付けない効果もあります。
 土は、鉱物の粒が主体となって出来ています。砂漠などの乾燥した環境では水分が保持できないために砂嵐が起きたりします。中国大陸も砂漠化により大規模な砂嵐が起き、黄砂となって街をおそい、一部は日本にまで届いて問題となっています。
 
 黄砂の中にも微生物は生息しています。
 大学などでは、中国大陸の土壌菌を輸入して研究することがあるそうですが、最近は日本国内でも簡単に見つかるようになったそうです。